2013年3月27日水曜日

匠の技 習得を手助け 世代間をつなぐ【中國新聞】

匠の技 習得を手助け 世代間をつなぐ
技能伝承では世代間ギャップも壁になる。大手企業に動画の教材を納めてきたベンチャー企業フィールイメージ(安芸区)は、若手への技術始動に悩む中堅、ベテランの技能者を支える。「これほどつやって曲げるの」。同社の小林健一社長(39)がファイルを手に作業員に質問する。かつてマツダに勤め教育マニュアル作りに携わった経験を生かし、昨年から金属曲げ加工のハマダペンディングサービス(呉市)に通う。同社では職人気質の中で育った中堅以上が、20代にどう技術を伝えるか迷っていた。350社と取引するハマダの仕事は多種多様。金属板にかかる圧力を紙1枚を挟んで微調整するプレス技術を駆使する。だが、プレス担当の藤川義治係長(37)は「自ら聞き、まねして仕事を覚えてきた。教え方までは分からない」と明かす。一方、今の20代は職人気質の職場に戸惑う。双方の「潤滑油」となるのが小林社長の役割。まず若手から聞き取りを始めた。試行錯誤の途中だが、藤川係長は「外から人に入ってもらい、教えようという意識が高まった」と感じる。「多くの町工場が同じ課題で困っている」と小林社長。ものづくりの継承に商機を見出す。 2013年3月27日水曜日 中國新聞 朝刊掲載

2013年3月6日水曜日

中小生産現場の教育担当 組織改革の「潤滑油」に<日本経済新聞>

マツダOBの小林健一社長(39)が手掛ける異色のベンチャー企業、フィールイメージ(広島市)。マツダの生産現場で培った経験を生かし、デジタル映像を使った分かりやすい生産現場マニュアルの作成を手掛けてきたが、中小企業の教育担当として生産現場を支援する事業を本格化している。肝となるのは、ルールを作り中間管理職の意識を改革することだ。造船の町として知られる広島県呉市。小林社長が〞教育担当″として通うのが金属曲げ加工を手掛けるハマグペンディングサービスだ。プレス、ロール、ベンダーと呼ばれる加工部門にそれぞれ分かれた工場には小林社長が用意したファイルが置かれている。数十ページに及ぶファイルにはハマダの年間計画、社員の項目別評価、社員に対するアンケートなどがある。「アンケートどう?」「ほかの部門もやってみたいと言う社員が結構いるんですよ」。小林社長が気さくに声をかけるとプレス部門の藤川義治係長(37)がファイルを開きながら答えた。小林社長がハマダの教育担当になったのは約半年前。約30人の社員の大半を占める職人一人一人の責任が不明確だと感じ、まず取り組んだのは「ルールを決めて責任と権限を与える」(小林社長)ことだった。中間管理職の係長が職人を統括し生産の流れや評価、職人の希望を聞き取りファイルに書き込むことにした。係長とはいえ「何をすればいいか分からなかったが自覚が芽生えた」(藤川係長)。4年前に社長を引き継いだハマグの浜田篤社長(33)が期待するのは「職人を多機能な仕事ができるようにすることと技術を残すこと」だ。1つの部門に長年属することが多い職人の世界。技能が磨かれる一方で、職人は自分の部門の仕事が終わると他の部門が忙しくても帰ってしまうことが多かった。競争が激しくなる中、企業の生産性を上げるには「異なる部門の技能を身につけてもらう」(浜田社長)ことが不可欠。技能の伝承も苦と違い熟練者の技を見て自主的に学ぶ若手は少ない。声を掛け合い若手に伝えを」とが必要で、部門内や部門間の橋渡しとなる人材の育成が求められる。これまでは社長が職人と一対一で接してきたが「社長、係長、職人Le潤滑油になる」(小林社長)。ルール作りや組織改革を約1年かけて構築したい考えだ。日本は中小企業が9割を占めるが、技術力が高くても技術の伝承や組織運営が十分ではないケースが多い。小林社長のような大企業のOBが、国内のものづくりを守っていく環境が広がることが期待される。
2013年3月6日 日本経済新聞