技能伝承アドバイザー 小林 健一さん(33)=広島市中区
団塊世代の大量退職や正社員の減少で技能継承に苦戦する日本のものづくり現場。そのサポートに商機を見いだしてマツダの技能工から転身した。得意のパソコンで技能教育用の動画を手掛ける映像制作会社を設立。マツダ時代に重ねた失敗の経験を'逆に事業拡大の糧に転嫁させたバイタリティーで走り回る。 「技能伝承アドバイザー」との肩書をお持ちです。ものづくりを取り巻く現状をどうみていますか。
-なぜ動画制作なんですか。活字離れが進む若者を短期間で教育するにはイメージで伝える動画が一番だと考えました。鋳造などで不良品が発生する悪い工程の例やメカニズムもひと目で理解できます。-きっかけは。マツダの塗装部門にいた1990年代後半。国際標準化機構(ISO)の環境品質管理の規格に沿って品質改善などの教育マニュアルの作成を担当しました。工業高時代からの趣味だったパソコンを使って分かりやすくできないかと考え、動画にたどり着きました。アニメーションソフトの操作は独学。マニュアルは分かりやすいと評価され'これなら他社でも受け入れられると確信しました。
-よく独立を決意しましたね。もともと志向が強く夢を追いかけるには三十歳代前半のこのタイミングしかないと思いました。団塊世代の大量退職の問題もクローズアップされ始めていました。妻が働いてくれていることもありました。動画の効果をマツダが認めて'採用を約束してくれていたという当てもありましたね。
-マツダ時代の失敗がいい経験になっているとか。複数車種を流す混流生産がマツダの特徴。ボディーの鉄板と樹脂をつなぎとめる部品を別の車種の位置に装着する失敗を何度もやりました。伝説になるほど毎日ポカばかり。上司から「ワーストワン」と呼ばれました。分かりやすさへのこだわりは作業手順や危険性への理解が足りず、怒られて涙を流した経験があるからです。動画には現場の視点を心掛けています。
-現場経験がない企業向けに動画を作るのは難しいのでは。例えば三菱レイヨン。製品は自動車とはまるで違うし不安でした。が、三菱レイヨンに入社した人も僕もゼロからの出発。僕が工程を丹念に勉強し動画にすれば新入社員には分かりやすい教材になります。分からないことがプラスに働けばいいや、と思いました。
-目標は。昨年末、広島市安芸区から中区のSOHO国泰寺倶楽部にオフィスを移しました。倶楽部の支援も受けながら受注を増やし、商品のブランド価値を高めていきたいです。
2008年1月21日 中国新聞 トップページ掲載
1 件のコメント:
とても魅力的な記事でした!!
また遊びに来ます!!
ありがとうございます。。
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